純丘曜彰教授博士: ニュースの蜂

『朝まで生テレビ!』の元ブレインが、硬派ジャーナリズムの精神に基づき、
浮き世の暇つぶし、憂ばらし、肝だめしに、大手の新聞やテレビがひよって
伝えないネタを、勝手取材、執着調査、偏屈考察で突き刺しまくります。 

せめて子供たちには里親を


/今回の震災では親を失った子供も多い。いくら集団疎開でも、彼らをこのままにしておくわけにはいかない。せめて親族を探す間だけでも、心に大きな傷を負った彼らをケアするホストファミリーの受け入れ体勢を整えていく必要がある。/


 ようやく被災者名簿が整理され始めたばかりだが、今回の震災で家族を失ってしまった子供たちも多い。にもかかわらず、まだ幼い彼らまでもが避難所の中で気丈に力を尽くしている姿を見ると、涙が止まらない。
 
 阪神のときの被災者の社会的孤立の失敗の経験を踏まえ、西日本の諸市では、できるかぎり地域コミュニティを保ったままでの集団疎開を準備しているが、子供たちには、それぞれに暖かい家庭と保護者が必要だ。その子だけを見つめ守る目が必要だ。成長しつつある子供の一年、一日は、成人の十年にも匹敵する。まして、今回のことは、精神的にも、あまりに大きな傷を与えている。いつまでも被災地、疎開地で、こんなつらく悲しい思いをさせておくことがあってはなるまい。
 
 正規に養子縁組をしなくてもいい。幸いに後に親族がみつかるかもしれないではないか。親族の生活が落ち着いてその子の引き取れるようになるまでだけでもいい。だが、それだって、彼らの親族捜しを親身に手伝ってあげる人が必要だ。とにかく、当座だけでも、一人一人に、きちんと保護する家族が付いてあげるわけにはいかないのだろうか。
 
 国内でも、カウチサーフィングというネットサイトがある。これは、本来は外国人旅行者との交流を図るためのものだが、ゲストを受け入れられる部屋や環境がリストアップされている。もちろん、子供となると事情が違うのはわかる。だが、教会や寺社、ボーイスカウトのOB会、学校の同窓会などを通じ、信用できる篤志の家族をさらに多く募ることもできるだろう。高校生などは、これを機会に本人が望むなら、ホストファミリーは海外でもかまうまい。いずれにせよ、行政任せというのは無理だ。もう手一杯だ。
 
 ACジャパン(旧公共広告機構)は、さかんに、子供にあなたの手当てを、と言う。だが、いま、あの北の海の冷たい津波とともに、その手の暖かさが永遠に失われ消えてしまった子供たちが数多くいることを思いだそう。自分の子供たちが成長して巣立ち、空いている部屋があるなら、そこに疲れ怯えた子供たちをゆっくりと寝かしてあげよう。そして、あれは悪い夢だった、もうだいじょうぶ、と、あなたが抱きしめてあげよう。
 
 今回のことは、未曾有の天災とはいえ、大人が、自分たちの繁栄と欲得に心を奪われ、歴史の知を忘れ、自然の力をなめ、人が作った堤防でなんとかできるなどと思い上がった結果だ。子供たちには何の責任もない。大人のツケを、未来ある子供たちに回してはならない。こんなことになってしまって、ほんとうにごめんね、と、いくら謝っても、もはやたるものではない。
 
 せめて四月には、新しい学校で、新しい友だちができるように、そして、同じふるさとの子供たちが、落ち着いて会ったり、電話したりできるようにしてあげたい。できるだけふるさとの人々の集団疎開地に近いところで受け入れてあげたい。
 
 集団疎開については、その受け入れ場所や移動方法など、まだ決まっていないことばかりだ。だが、もうすぐ始まる。物事が決まり次第、すぐに対応できるように、受け入れ地域の側でも準備を始めよう。だが、なんども移動ばかりしていると、子供たちは、いよいよ心も不安定になる。がんばれ、などと、励ますのは厳禁だ。里親となる家族だけでなく、地域や学校も一体となって連携し、不安だらけの子供たちのケアができるように、強度のストレスにさらされた子供の心理のことなどをよく学んでおこう。
 

by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka 純丘曜彰教授博士 (大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン)  

NHK受信料の大津波がパソコンに襲いかかる!


/今回の震災でNHKがネット再送信をやっていたのは、善意などではない。3月1日から放送法が「改正」されつつあり、夏には、携帯やカーナビはもちろん、ケーブルテレビ、さらには、テレビ機能のないただのネット接続パソコンまで、受信料が課金されることになっているからだ。/


 今回の震災に際し、NHKの放送がUstreamやニコニコ動画で再送信されていたのを見て、やはり国民的大災害だからなあ、などと、感心していたなら、大きな勘違い。昨年12月3日、ほとんどのテレビ局があえてまったくニュースで採り上げない間に、じつは「放送法等の一部を改正する法律」が公布され、今年3月1日からばらばらと条項ごとに施行になってきているのだ。7月24日に、アナログ停波が決定されているが、おおよそ8月末までには、この法律も完全施行となる。
 
 放送法等の一部を改正する、というと、些細な変更であるかのような印象を与えるところが、総務省もなかなか小憎い。実質的には、放送法の根幹から引っ繰り返すもので、施行後は「新放送法」と呼ぶべきものとなる。というのも、この「改正」は、放送法の対象である「放送」の定義そのものを変えてしまうものだからだ。
 
 すなわち、従来は「放送」と言えば、放送法第2条1の2によって「公衆によって直接受信されることを目的とする無線通信の送信」だったのだが、この「改正」では、「電気通信(電気通信事業法第二条第一号に規定する電気通信をいう。)の送信(他人の電気通信設備(同条第二号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)を用いて行われるものを含む。)」とし、この条項は、すでに3月1日から施行されている。
 
 くわえて、NHKの受信料に関する旧第32条「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」を新第64条にずらし、これに第4項として「協会の放送を受信し、その内容に変更を加えないで同時にその再放送をするものについても適用する。」という規定が加えられる。
 
 ようするに、先月までのNHKは、無線の放送の受信を普及するだけのものだったのに、今や、あらゆる電気通信手段で日本全国への映像配信を普及する、などという、壮大な国家的事業目的を持つ組織へと「発展」したことを意味する。そして、この壮大な事業のために、携帯やカーナビはもちろん、今年の夏の終わりまでには、ケーブルテレビだろうと、ネットにつながっているだけのパソコン(テレビ機能無し)だろうと、とにかくNHKからの映像が見えてしまうものを持っているやつら全員から、ごっそりと受信料を巻き上げることができるようになる。とくに会社や事務所は、パソコンが置いてある部屋ごと、部課ごとに、個別に1件分として課金されるので、総計すると莫大な金額だ。
 
 東北から関東までぐっちゃぐちゃの状況において、昨日3月18日も、定例閣議でちゃんと「放送法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」が出され、着々と話は進んでいる。他のテレビ局がさんざんネット配信にちゃちゃを入れてきたのに対し、NHKだけは「接触者層を増やす必要がある」などと言って、昨年12月6日からYoutubeで自局のアニメ番組ほかの無料配信をやって、太っ腹そうに見えたが、それもこれも、こういう下心があればこそ。今回のストリーム配信も、この一環だ。
 
 だれもろくに反対もせず、国民が選んだ国会議員たちがわけもわからず決めちまった話なんだから、いまさらどうしようもない。仕事専用のパソコンなのに、ネットにつながっているというだけでNHKに受信料を取られるのはおかしい、と思うなら、改正法の全条施行前に、プロバイダ側に、再配信も含めてNHKの映像すべてを有害ブラクラとして検閲遮断したファイヤーウォールでも準備してもらうほかあるまい。
 

by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka 純丘曜彰教授博士 (大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン)  

復興はない。西日本へ勇気ある撤退を。

 

/今回の震災と原発事故で日本全体の生産性の5%以上が中長期的に失われた。民間も、東北への復興投資より、関東の調整機能の解決と西日本の既存工場の向上を選ぶ。すでに救援物資は全量放出であり、次はとうぶん期待できない。阪神大震災のときのように、避難所で仮設住宅の建設を待っているのは無理だ。/

 

 こういう計算は、以前であれば軍需省ないし経企庁がやったものだ。ところが、市場経済の自由化とやらで2001年にばらばらに解体されてしまった。このため、この非常事態において、一週間かかっても、絶対需要である燃料や食料、医薬品に関してすら、まともに被災地への配給計画が稼働しない状況にある。とはいえ、この役割を現在の業種縦割りの経産省に求めるのは、酷かもしれない。まして、東京一極集中の危険性は、原発並みに、以前から指摘されてきたことだ。

 

 急ぎの概算で言えば、東北のGDPは年400億米ドル。今回の被災で、これが、およそ半減したと思われる。生産設備が無事でも、物流とパワーの破断で、現時点でとうぶん稼働できないものも含めれば、今年度の生産性はさらに低い。くわえて、東北の被害は、関東に致命的な電力不足をもたらした。現在の混乱は、さまざまな調整によって、徐々に多少は緩和していくだろうが、発電能力そのものの絶対的な不足は、今後も中期的(1年以上10年未満)に解決しない。また、関東は、小麦などの輸入食料を除けば、東北に第一次産業を依存しており、近々に生鮮食料品が枯渇する。肥料生産の問題もあり、東北、とくに太平洋側の農業は、今後、数年は期待できない。秋になれば、主食である米の不足も、もっと表面に出てくる。このため、関東の通常年のGDPは、1兆8000億米ドルだが、3時間停電/1日24時間をとりあえずの単純計算のための係数とすると、2000億米ドル以上の減少となる。

 

 日本全体のGDPは、5兆米ドル弱。東北と関東の直接的な影響だけで、およそその5%の生産性が中長期的に失われた。経済の全国的連携性を考えれば、10%を大きく越えるかもしれない。もとより人口減と高齢化で、日本はもはや国力、マンパワーそのものが急激な衰退傾向にある。もちろん、政府セクタが、最善を尽くして公費で東北のインフラの再生を図るだろうが、これまた中長期のこと。ただでさえ赤字公債は破綻寸前、くわえて災害による税収激減の状況では、あまりにも夢のような話だ。この状況では、大手民間企業の復興投資は、東北を生産設備から再生するより、関東の調整機能低下を解決し、西日本で既存の工場の生産性を向上する方に向かうというのが合理的な判断とならざるをえない。

 

 いま、十六年前の阪神淡路大震災の知見が、むしろ裏目に出ているのではないか。あのときの経済的な被害は、局地的だった。阪神の場合、ピークで避難所に30万人。今回は50万人。この概算からすれば、被害は倍近い。そのうえ、今回の災害は、あまりに広範囲で、補給地からも遠く、分散している。阪神のときは、火災と余震さえ鎮まれば、倒壊家屋から生活物資を持ち出すこともできたが、今回は、津波ですべてが失われた。現在、全国の災害備蓄物資のすべてが放出され、世界からの支援も届きつつあるとはいえ、これで終わりだ。次は、西日本での増産を待つしかない。現地では情報が限られ、この日本の全体状況を理解できないと思うが、阪神のときのように避難所にいて仮設住宅の建設を待っている余裕はないのではないか。

 

 これらのマクロ的経済を推論をするには、現段階では、あまりにもデータが不足している。規模が大きい問題であるから、係数がわずかに違っただけで、結果もまったく異なる。だが、以上の推論の係数は、かならずしも極端に少なくはないと思う。そして、生産性の不足は、日本人が一丸となってがんばる、などという精神論だけで、中長期的に乗り切れる問題ではない。物そのものが不足すれば、どれほどの募金も、問題を解決することはできない。

 

 たいへん厳しい現実で言葉に詰まるが、これらの全体状況を考えれば、もはやとうぶん東北に復興はない。死んだ人は戻っては来ない。幸運にも生き残れた人々、命がけで救い出された人々が、これ以上、一人たりとも疲れ飢えて死ぬことがないようにすることこそが、いまの最大目標だ。いまだに行方不明の親族知人がいる中で、ふるさとを離れることには、ほんとうに辛い思いがあるだろうと思う。だが、厳しい環境の避難所では、とおからず感染性の病気が蔓延することは必至だ。

 

 今回ばかりは、どうにも助けには行かれないのだ。いま、人が増えれば、その増えた人自体の生存のための重みで、東北の状況はますます悪化してしまう。最後まで残ってふるさとを守り続ける人々の負担を軽くするためにも、自力で移動できる人は自力で、また、その力のない人々も公的な準備が整い次第、順次、こちらへ来てほしい。西日本のすべての町、すべての村は、最善を尽くし、雪の降りしきる地方から来る凍えきったあなたたちを、心から暖かく迎え入れてみせる。だから、いま、どうか、新しい土地で新しい生活を始める勇気を持ってほしい。


 

by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka 純丘曜彰教授博士 (大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン)  

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