純丘曜彰教授博士: ニュースの蜂

『朝まで生テレビ!』の元ブレインが、硬派ジャーナリズムの精神に基づき、
浮き世の暇つぶし、憂ばらし、肝だめしに、大手の新聞やテレビがひよって
伝えないネタを、勝手取材、執着調査、偏屈考察で突き刺しまくります。 

2013年05月

テレビがダメだと言うけれど

/テレビがつまらなくなったのではなく、テレビがヒマで貧乏な独身男女のために番組を作るのを止めただけ。代わって、昨今は、収入のわりに消費性向が高いファミリー層向けに多くの番組が作られ、テレビ局はみごとに増収増益。見せかけの視聴率はともかく、家族揃っての視聴者数は、きちんと取れている。/

 まあ、たしかに視聴率は落ちている。ところが、実際は意外にも、テレビ局は、のきなみ増収増益。これは、スポンサーとしても、CMを打ったら打っただけのリターンがあるから。ここには、テレビを見ているだけのやつには計り知れないマーケティングの秘密がある。テレビがつまらなくなった、見なくなった、と、うるさい連中は、たいていヒマな貧乏人だ。正直なところ、連中側よりむしろ先にテレビ局側からマーケットとしてディスってハブられただけのこと。

 たとえば、F1(女性24歳~34歳)。バブルの頃の小娘どもは、にわか男女平等とやらでもらった法外な金額の月給とボーナスを、人生の後先も考えず、どうでもいいものにジャカスカと浪費してくれた。だから、F1、とくに独身OL向きにさまざまな番組を作り、化粧品その他のCMを大量に流して、カネを使わせた。だが、いまは貧乏派遣。こいつらのために番組なんか作ったって、どうせカネを持っていないんだから、スポンサーもつかない。M1も同様。正社員ですら、余裕が無い。免許も無いから、スポーツカーなんか絶対に買やしない。デートの予定もないから、見栄を張るもの買わない。というか、買えない。せいぜい連中でペイするのは、波代の安い深夜のアニメの、声優のCDくらい。

 一方、F3M3の中高年(50歳~)の中には、カネがだぶついているやつらがいくらでもいる。午後のサスペンス、夕方の時代劇の再放送なんて、新規の番組制作費もかからず、そりゃおいしい。懐かしいくらいの方が、食いつきがいいし。CMで流せば、ベンツやBMWみたいなとんでもない高級車でも、即金買いしてくれる。BSだの、ケーブルだのでは、高級旅館、海外旅行の番組が目白押し。他に情報源もない連中だから、テレビショッピングで、設置サービスまでする、なんて言ったら、すぐに電話をかけてくる。

 貧乏なF1M1に取って代わって重視されているのが、F2M2。以前は仕事に忙しく、視聴時間が短く、もっともテレビがマーケットとして手薄にしてきたところ。ところが、昨今、家族揃って家で夕飯を食べ、そこそこのリビングで大型テレビを見られるくらいのファミリー層となると、共働きにせよ、かなり手堅い収入がある。軽自動車くらいは買い換えられるし、なんとかやりくりして家を建てよう、家具を新調しよう、子供のものを買ってやろう、と、中高年ほどのカネはないわりに消費性向がかなり高い。そりゃ、スポンサーもCMを打つ。だから、ゴールデンには、子供と家族で見るような漢字の書き取りだの、教科書クイズだのが並ぶことになる。出ているタレントも、みんなママタレ、パパタレ。家族こそが、いまのテレビの中心マーケットだ。家族みんなで揃って見てしまうから、個人個人が別々のテレビで見る独身男女のように、見せかけだけの視聴率は上がったりしないが、じつは、視聴者数そのものは、この手法で確実に維持している。

 ようするに、予算規模のでかいテレビは、テレビにかじりついて流行を追っているような貧乏独身男女なんか、マーケットとして番組作りの対象とするに値しなくなった。ろくにカネもつかわないくせに、近頃の番組はオレさま向きじゃない、けしからん、など喚き散らす面倒くさいモンスター連中は、せいぜい淋しく一人でスマホでも弄って、小銭すべてゲーム屋に課金されてしまえ、というだけのこと。

 オレさまこそ、マーケットウォッチャーだ、なんて言っていって、独身で遊び歩いて、流行を言い散らしていた連中が、いまやもっとも流行遅れ。テレビが時代遅れなんじゃなくて、今時のテレビはつまらん、なんて言うようになっちゃった連中こそ、老いぼれて、テレビからも、世間からも、取り残されてしまっただけ。


by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka 純丘曜彰教授博士 (大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。

オフィシャルサイト http://www.hi-ho.ne.jp/sumioka-info/
生活の哲学  http://sumioka.doorblog.jp
ニュースの蜂 http://newsbee.doorblog.jp)  

タコ焼きのルーツを探る

/タコ焼きの秘密は、あの多壺鍋。十三世紀のタイで作られ、オランダやフランスに渡って鉄板になった。そして、1900年ごろの神戸で、それで作っていたエスカルゴのベニエ(小麦衣焼き)の具がタコに変わったらしい。/

 ウチこそ、タコ焼きの元祖、という店がいくつかある。じゃあ、なんでタコが入ってるのか、ちゃんと説明してみせろよ。博物館で当時の現物まで抑えたわけじゃないが、おおよその道筋はわかった。その謎を解く鍵は、あの丸い凹みのある多壺焼器にある。じつは、あれ、驚いたことに、アジアからヨーロッパ、カナダまで、世界中にあるのだ。

 話は、十三世紀のタイから始まる。スコータイ朝第三代ラームカムヘーン大王が、中国から陶工たちを招聘した。それまでタイでは水の滲みる素焼の土器しかできなかったのだが、この華人陶工たちによって釉薬が持ち込まれ、宋胡禄として、タイの一大輸出産品となった。また、タイでは、昔からカノムコック(米粉のココナッツミルク焼き)が甘い菓子として好まれていたが、これを作るのに、いちいちバナナの葉で小分けしていた。それが、釉薬の登場によって、多壺陶器鍋に取って代わる。これこそ、まさに、あのタコ焼き器の大元。

 話はまだ続く。この多壺陶器鍋が直接に日本に入ってきたのなら、山田長政の時代から日本にもカノムコックのような食べ物があっただろう。だが、日本に米粉はあってもココナッツミルクは無く、カノムコックのようなふんわりとした焼き菓子を作ることはできなかった。だから、そのための多壺陶器鍋も必要がなかった。そうでなくても、カノムコックには、甘く、なんの具も入ってはおらず、現在のタコ焼きとは根本的に違う。

 だが、まさにその山田長政のころ、オランダもまたタイに入り込んでいた。が、1663年に華僑たちと貿易を争い、追放されてしまう。この後、ヨーロッパでオランダ打倒をもくろむルイ十四世のフランスがタイに取り入る。しかし、これもカトリックの宣教がしつこく、十七世紀末には追放されてしまった。このとき連中がヨーロッパに持ち帰ったのが、あの多壺陶器鍋。

 オランダには米粉が無いので、小麦粉と蕎麦粉で代用した。これが、お菓子のポッフェルチェ。その独特の多壺鍋は、その後、鋳物の鉄板で大型化し、デンマークからカナダまで、ポッフェルチェは爆発的に普及する。クリスマスシーズンには、各地のマーケットにポッフェルチェの屋台が出る。ドイツやオランダなんかでは、日本のタコ焼き器そっくりの家庭用ポッフェルチェ焼き器がふつうにそこらで売っている。

 一方、帰国したフランスの宣教師たちは、この多穴陶器パンをエスカルゴの調理に使った。エスカルゴは、修道院の葡萄畑で養殖されており、復活祭前の肉断ちの季節に好んで食べられていた。エスカルゴと言うと、殻ごとのイメージがあるが、あれは、いったん全部を引き出し、寄生虫の危険性がある内臓を取り去って味付けし、また殻に詰め直したもの。当時は、内臓を掃除した身だけを多壺陶器鍋で直接に香草バター焼きにしていたようだ。

 さて、明治維新。日本にも大勢の外国人たちがやってくる。1900年ころになると、神戸にはオランダ人やフランス人が大勢いた。連中が例の多壺の鍋や鉄板で作ったのが、エスカルゴのベニエ。じつは、エスカルゴ料理では、殻の中に旨味のある汁を留めるブルゴーニュ風の香草バター焼きだけでなく、その旨味のある汁を小麦の衣に吸わせる、ポッフェルチェに似たベニエ(衣焼き)にするのも一般的な調理方法。しかし、日本ではエスカルゴが手に入らず、連中は地元名産のタコを使っていた可能性が高い。英国人はタコを「悪魔魚」などと言って忌み嫌うが、イタリアやギリシア、南フランスなどの地中海沿岸諸国では、タコはよく好まれる一般的な食材のひとつ。そもそも、タコにも背に巻殻がついたやつがいるくらいで、もともとエスカルゴとは同類。だから、両者の味が似ていて当然。

 つまり、タコ焼きのタコは、本来はエスカルゴ。そのベニエの代用の具として、タコが選ばれた。青ノリやマヨネーズをかけるのは、もともとの香草バター焼きの名残か。第一次世界大戦中の1918年、なんらかの事情で在留外国人から例の多壺鉄板を譲り受けた関西の露天商の金城組(現・三島屋)が、オランダ風のポッフェルチェを「ベビーカステラ(鈴カステラ)」として日本で最初に売り出している。そして、翌1919年、明石の向井清太郎が、エスカルゴまがいのタコが入った「玉子焼き」を始めた。昭和に入ってからの大阪の「ラジオ焼き」なんかより、はるかに古い。ちなみに、日本で最初に日本人にエスカルゴを出したのは、まさに神戸の「エスカルゴ」というフランス料理のレストラン。ただし、それも、1953年、つまり、戦後になってからのことだ。そして、タコ焼きは、近年、日本食ブームとともにアジアに再輸出。タイではあまりタコを食べないので、カニカマが入っているとか。


by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka 純丘曜彰教授博士 (大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。

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