純丘曜彰教授博士: ニュースの蜂

『朝まで生テレビ!』の元ブレインが、硬派ジャーナリズムの精神に基づき、
浮き世の暇つぶし、憂ばらし、肝だめしに、大手の新聞やテレビがひよって
伝えないネタを、勝手取材、執着調査、偏屈考察で突き刺しまくります。 

2014年08月

地方ゾンビ都市の切り捨ては不可避

/予備校撤退の背景には、少子化以上の、産業構造の変化によるコンパクト・ステートへのマクロ動向がある。江戸時代は米作りのために、また、戦後は人材供給のために、生産人口を全国に面で展開してきたが、次世代では、人間関係の途絶により、拠点都市とそれらを繫ぐ幹線しか残らないだろう。損切り売逃げの決断は早いほどいい。/

 代ゼミが全国27校を主要都市7校に集約する。大半の報道は、これを少子化に苦しむ同社のミクロ的問題として捉えていたが、むしろ代ゼミの方がマクロ動 向の先読みで地方都市を見限ったのではないか。この背景には、少子化以上の、もっと大きな、いやおうなき「コンパクト・ステート(集約国家)」への潮流が あるのではないか。

 江戸時代、日本にはおおよそ三百の藩があった。これは、日本の経済が米作りを主軸とし、生産人口を広域に面展開する必要があったからだ。この構造は、高 度経済成長期においても、米ではなく人材の生産供給地として、都市流入と地方還元のバランスをかろうじて保っていた。しかし、減反政策は、農家の跡継ぎで すら、地方に残っている意味を失わせた。農業に代わる工場なども、その後の円高の結果、海外に流出した。

 高速道路や新幹線などの公共工事に依存する人々もいたが、これも「仕分け」で壊滅。どのみち、高速道路や新幹線が完成しても、閑散とした道路に車は無 く、列車もガラ空きのまま。団塊世代以降は退職してももはや故郷には戻らず、送り出し側の戦前世代の死去に伴い、地方辺境の限界集落から「廃村」が進行し ている。これは、利便性の問題ではなく、人間関係そのものの途絶によるものであり、いまさら高速道路や新幹線を計画しても、地方の回復にはつながらない。 ただでさえ人口が都市集中している上に、オリンピックまで東京が引き受けたために、地方では、そもそも、いかなる建設工事も、それを担うに足る生産人口そ のものがすでに存在しない。

 単純な少子化や人口減の問題ではない。もはや地方の第二都市以下は、既得権高齢者以外は、仕事が無い。生活ができない。そのため、家族世代が居住しな い。人口が再生されない。小中学校、高校も統廃合が相次いでいる。だから、予備校はもちろん、大学病院以外の駅弁大学も存在意義を失う。デパートも、スー パーも、コンビニさえも撤退する。書店も、整体院や鍼灸院に代わる。残っているのは、年金受け取りの郵便局と農協くらい。新設されるのは、老人ホームと即 席霊園、産廃処分場ばかり。つまり、農村はもちろん地方都市も、「人間の生活の場」としては、すでに死んでしまっている。

 都市部ですら、生産人口は減っていっている。いくらそこから税金を吸い上げて、地方交付でばらまいても、交通や行政、防災に関して、人口一億三千万時代 の全国的な面展開を維持できるわけがない。国力の減少相応に、地方部から撤退し、拠点とその連携線の維持のみに資源を集中せざるをえない。全国規模の民間 企業も、県下支店を廃止し、ネットや宅配に置き換える。地方の切り捨てだ、と、怒る人々も多いだろう。だが、切り捨てられる前に、すでに人口再生能力を 失って、とっくの昔に街としては機能的に死んでしまっている社会の墓場の「ゾンビ都市」。死んだものを生き返らす余力は、残念ながら、この国にはもう無 い。マクロ的に見て、できもしない「町おこし」「都市再生」の夢物語で高齢の「田舎者」を騙し続けるのは、罪だ。それは、勝てもしない戦争を続けて日本を 壊滅させた大本営と同じ。

 産業構造の変化から、事態は江戸時代より悪い。世界の都市構造と比較すれば、面で均質に人口が拡散していた日本の方がかなり異様だったのだ。人手を必要 とする米作りを止めてしまえば、「普通の国」として、点の都市と線の道、あとは広大な無人の暗い森のみとなるのは当然。行政が積極的に集約を図らなくて も、個人任意の市場原理的な人口移動で、次の若者世代においては、州都とせいぜい県庁所在市くらいしか残らないのではないか。これらを繫ぐ幹線はともか く、周辺派生的な交通や施設、産業については、投資するだけ後悔するだろう。それどころか、既存のものでさえ、損切り売逃げ、大都市避難の早期決断が求め られる。

 結果がこうである以上、だれがなにをどう言おうと、戦後日本の政治と文化は大失敗だった。せめてこの国が全滅しないように、生き残りへと政策を転換して はどうか。いや、政治がやらなくても、この国を愛し、この国で生きていこうと思うのなら、個人個人が生き残りの場を求めて、手を打っていくことが求められ ているのではないか。


by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka 純丘曜彰教授博士

(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。)

妖怪テンバイチューと呪いの妖怪ウォッチ

/ヤフオクに出ているのは、妖怪テンバイチューが金満モンスターの妖怪ボッチを育てるためのワナ。世にも恐ろしいタタリが取り憑いた「呪いの妖怪ウォッチ」。そんなのを持っているおともだちの豪邸に近づいてはいけない。/

 この世で起きる不可解な出来事は、すべて妖怪のしわざ。そんな妖怪たちを見ることができる場所がヤフオクです。妖怪たちとの出会いが、あなたの人生にど んな影響をもたらすのか。それは、誰にも分かりません。さて、ほしかった妖怪ウォッチが買えなかったおともだち。でも、おとうさんやおかあさんに当たり散 らしてはいけません。というのも、こんな恐い話があるのです。

 エピソード1:ケータくんのクラスには、妖怪ウォッチを手に入れたおともだち、ボナミちゃんがいました。今日、さっそく学校に持ってきて、みんなに見せ びらかし、自慢ばかりしているのです。それで、みんなあきれて、ボナミちゃんは、だれもおともだちがいなくなりました。でも、そのことを、店で何時間も並 んで買えなかったケータくんパパに話すと、不思議そうな顔をします。変だなぁ、ボナミちゃんパパは、お店の列には並んではいなかったけどな、と言います。 おかしいぞ、さては、と、思いましたが、ケータくんは、妖怪ウォッチを持っていなかったので、なにも見ることができませんでした。ところが、翌日、ボナミ ちゃんパパは、頭中、包帯だらけで、歯も全部、叩き折られてしまい、なのに、バカボンのおとうさんのように、鼻毛を揺らしながら、へらへらと笑って、大き な白いベンツに乗っていたのです。そのことを伝えると、ケータくんパパは言いました。それは、きっと妖怪ボッチのしわざにちがいない、と。

 エピソード2:妖怪ボッチとは、何なのでしょうか。ケータくんから話を聞き、フミちゃんも、とてもびっくりしました。ケータくんと同様、フミちゃんも妖 怪ウォッチがほしいと言ったので、フミちゃんパパも朝からお店に並んでくれたのですが、やはり買えなかったのです。けれども、そんな自分のわがままのせい で、自分のパパが、ボナミちゃんパパみたいなことになったらどうしよう、と、とても恐くなったからです。ところが、そのパパが、夜、書斎のパソコンで仕事 をしているとき、中からなにかただならぬ気配が! フミちゃんは、驚いてドアを叩きました、パパ! どうしたの? だいじょうぶ? すると、中から、ふ らーっと、フミちゃんパパが出てきました。パパの背中には、ブキミー族無職神の妖怪テンバイチューが取り憑いていました。

 エピソード3:フミちゃんは、すぐ電話でケータくんに相談しました。その話を聞いて、ケータくんパパは、フミちゃんパパのところに飛んで来ました。ケー タくんパパが調べると、フミちゃんパパは、パソコンでヤフオクをやっていたのです。フミちゃんパパは、フミちゃんがほしがっている妖怪ウォッチを手に入れ ようと、何万円もの金額になるまで、何度もポチっていました。妖怪テンバイチューに取り憑かれ、目を血走らせて、へへへへっ、と笑いながら、さらに高い金 額を入力しています。ケータくんパパは、やめろ! 目を覚ませ! とフミちゃんパパを羽交い締めにして叫びますが、相手は妖怪です。信じられないような力 で、ケータくんパパは、壁まで飛ばされてしまいました。フミちゃんは、お兄ちゃんの部屋から金属バットを持ってきました。パパ、聞いて! 私を妖怪ボッチ にしたいの? ズルいことはダメ、って、パパが教えてくれないの! フミちゃんパパが、はっと我に戻って、振り返ったとき、オークションは締め切りになり ました。最後の一瞬に、ほかのどこかのおとうさんが、もっと高値で落札していました。それとともに、妖怪テンバイチューも、パソコンの画面の中に消えて行 きました。ケータくんパパが言います、きっと落札した家に取り憑いたな、と。

 あなたは、どうやって妖怪ウォッチを手に入れましたか。ちゃんと並んで、もしくは抽選や応募で手に入れたならだいじょうぶ。だけど、おとうさんがヤフオ クで手に入れたなら、あなたのおとうさんの背中には妖怪テンバイチューが。やがて、あなたは、おカネでなんでも手に入る、なんでもできると勘違いした金満 モンスターの妖怪ボッチになって孤立し、おとうさんやおともだちに、取り返しのつかないような、ひどいことをしまうかもしれません。ヤフオクに出ているの は、妖怪テンバイチューが新しい妖怪ボッチを育てるためのワナです。それは、世にも恐ろしい、タタリの取り憑いた「呪いの妖怪ウォッチ」。学校で持ってい るおともだちがいても、けっしてそんなおともだちの豪邸に近づいてはいけません。


by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka 純丘曜彰教授博士

(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。)

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