純丘曜彰教授博士: ニュースの蜂

『朝まで生テレビ!』の元ブレインが、硬派ジャーナリズムの精神に基づき、
浮き世の暇つぶし、憂ばらし、肝だめしに、大手の新聞やテレビがひよって
伝えないネタを、勝手取材、執着調査、偏屈考察で突き刺しまくります。 

2014年12月

受験以前の受験の心得

/受験も本番となると、いろいろ勝手が違うところがある。この場に及んで、いまさら勉強してどうなるものでもないだろうが、これまでの努力と成果をきちんとプレゼンしてこそ、本番の受験だ。/

1 答案は書類:わかっていることをわからせる
答えが合っていればいい、というものじゃない。答案は、コミュニケーション・ツールだ。カンニングや当てずっぽではなく、自分が正しくわかっていることを 採点者にわからせるために与えられたメッセージのチャンス。回答欄の大きさが、相手が求めている説明量。文字が大きすぎたり、小さすぎたりせず、与えられ た枠にちょうどおさまる説明付の回答をしよう。

2 当然、受験番号と名前から書く
提出者のわからない書類は書類ではない。受験番号などのまちがいは、無用のトラブルの元。休憩時間に呼び出されたり、そうでなくても、きちんと書いたかどうか、不安になって気持の切り替えができなくなるくらいなら、最初からきちんと書こう。

3 文字は正しく、はっきりと
書類として、一般に誤字脱字も減点。それがたとえ数学や物理化学でも。カタカナのンとソとリ、数字の1と7、6と8と9、数式のxと×、9とyなどは、意 図的に丁寧に。まして国語や社会の文字チェックは、かなり厳しい。とくに日本史の人名地名では致命的。トメ・ハネ・ハライは、自分がやったかやらないか、 ではなく、答案として、目で見て採点者にその有無が確実にわかるように。

4 行と桁、文字の大きさは揃える
東大生は、文系でも3ミリ方眼のノートを使っているやつが多い。横の行はもちろん、縦も行頭、句頭を揃え、並列的な記述を並列的に見えるようにするためだ。これは、相手にわかりやすく、というだけでなく、自分でも頭を整理するために必要。

5 いきなり書かず、要点を書き出す
採点では、最終の答えだけでなく、途中もチェックされる。そのとき、あらかじめ採点対象となるキーワード、ないし、キーステップが採点表で決められてい る。いきなり答えを書き始めるのではなく、その答えの中で必要となる重要な術語や公式をまず問題側に書き出そう。そして、それにしたがって具体的な答案を 作成。答えができてから、それらがきちんと入っているか、確認しよう。

6 回答の手順を整理
試験は、早押しクイズじゃない。目の前の具体的な問題より、一般的な手順を思い出せ。記述式なら5W1H。数学や物理化学でも、その種の計算の作業順序が あるもの。出題側からすれば、その問題は、たまたま一例に挙げているだけで、実際は一般的な回答能力があるかどうかを問うている。たまたまその一例の答え が合っていることより、きちんとした一般的な手順が踏まれているかどうかの方が採点されている。

7 全問回答が当然
トップクラスからドベクラスまで全体的な成績分布をさせる予備校の模試ならともかく、本番の試験では、僅差の受験生たちだけの問題が精選されている。この 中で、合格者と不合格者を切り分けるために、全部の問題が使われている。したがって、最初から捨ててかかることのできる問題の余裕など無い。絶対全問完答 が当然。時間配分を先に考え、要領よく取り組んで、決めた時間で次の問題に取りかかろう。

8 各問の配分時間はほぼ同じ
出題文の量の大小にだまされるな。問題にメインディッシュは無い。長文の問題でも、短文の問題でも、回答には同じくらいの手間がかかる。これは出題側の都 合だが、試験問題全体を特定個人がコースとして構成することはなく、難易度も作業時間もほぼ同等のものが差し替え可能に作られている。だから、出題文が長 いからといって、時間配分を多くしてしまうと、短文の問題の方が意外に内容的に難しく、時間が足らなくなってしまう。

9 時間は足り、かつ、余らない
回答欄の大きさと同様、問題は、標準的な合格者で回答時間いっぱいまでかかるように設計されている。きみが驚異的な天才でもないのに、もしも各問への配分 時間を合算して早く終りそうなら、どこかなにか大きな作業手順を見落としている危険性が高い。逆に、きみが合格すべき受験生なのに、どうやっても特定問題 への配分時間が足らなそうならば、やはりまったく余計なトラップにひっかかっていて、もっと簡単な作業手順が隠されていることをまだ見抜けていない可能性 が高い。

10 最後の1分1秒まで、きみに与えられた時間
終了10分前に予告されるが、これは最初から余裕として問題設計されている。この時点から新たな問題に取りかかるようでは、最初の時間配分で間違ってい る。残りの10分は、答案としての仕上げの時間。もはや消しゴムは厳禁。ただ、必須重要ポイントを再チェックし、横に吹き出し式ではみ出してでも、途中に 不可欠の術語や式を書き足そう。

まあ、落ち着け。受かるときは受かる。落ちるときは落ちる。合格不合格は相手が決めること。どうしよう、な どと、きみが悩む余地は、最初からまったく無い。きみは、きみができることをやってくるだけ。考えるのは、問題の答えだけ。あとは、帰って、ぐっすり寝 て、また次の試験に備えろ。


(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。)

教育のポルポト派

/教育改革論者の多くが、教育界から卒業できなかった社会の「負け組」。彼らはルサンチマンで丸暗記を否定するが、丸暗記のオウム返しの詰め込みのなかでこそ、ダイナミックな連想が織り上げられ、創造力が養われてくる。/

詰め込み型の知識ではなく、生きる力を、なんて言ってる連中の経歴を見ると、ほとんどまず東大出、京大出ではない。いわゆる教育学部、旧師範学校 系。それどころか、もっと正体不明の経歴の世襲私立学園長たち。その傘下に、各県の教育委員会、小中高の教員がいて、教育界では、一般企業では中核の、い わゆる一流大学出の教員は、むしろ少数劣勢。一ことで言えば、いまの日本の教育は、従来の日本の教育の「負け組」が支配し、その怨恨が子供たちを人質に 取ってしまっている。

彼らは、そもそも知識がどんなものか、わかっていない。記憶より応用を、なんて言うが、応用すべきモノがな ければ、なにも始まるまい。九九でも、年号でも、まず覚えないことには、どうにもなるまい。そして、さらに言えば、記憶こそが、ダイナミックな連想力であ り、創造力そのものだ。サザンが、で、キュー、を連想するのと、金閣寺、で、義満、を思い浮かべるのと、仕組みは同じ。どのみち無契的(図象的な類似性が 無い)な関係なのだから、記号論的には、理解もなにも、丸暗記する以外に方法などありえない。だが、こういう無契的なつながりがネットワークをなしている ほど、数や時代のイメージが深まる。

本当の意味での「勉強」をやってみたことのない連中には、丸暗記のオウム返しと、記憶や知 識、発想力の重要な繋がりがわからないのかもしれない。オウム返しは、短期記憶で、言ってみればデスクトップ。これに対して、知識は、複雑にハイパーリン クしており、何かをデスクトップの俎上に上げると、そこから、とめどなくずるずるとさまざまな連想が引き出されてくる。そうやって引き出されたものは、短 期記憶上でさらに新たに相互に結びついて、また仕舞い込まれる。この、記憶を織って知識を編む作業が「勉強」。

だから、むしろ丸 暗記のオウム返しのような短期記憶の反復の中でこそ、我々は、勉強として、知識を編む。書取だの、暗記だの、ろくに集中もせず、上の空でやっていてもム ダ、と、学校の先生は叱るが、まさにろくに集中もせずに上の空でやっているからこそ、いろいろなくだらない語呂合わせだの、イメージの妄想だの、いたずら 書きだのが湧いてくる。こんなつまんない授業、早く終わんないかなぁ、なんていうぼやきの中で、科目さえも飛び越えて、大きな教養、将来の自分の夢が作ら れてくる。このぼんやりした世界の教養の中で、自分を含めて、日常や人生を考えるとき、それが生きる哲学になる。

勉強に集中した だけの秀才は、絶対に天才にはなれない。それどころか、ろくに連想力、構想力が養われていないから、社会でも使えない。社会における自分の夢さえ描けな い。それで、連中は、学校というものから永遠に卒業できず、大人になっても子供相手の居丈高な「教育」にしか携われない。本当の意味での勉強では「負け 組」。そのうえ面倒なのは、連中の、学校というものに対する強烈なルサンチマン(怨恨)。あんなに集中して努力したのに、教育界以外では自分たちが評価さ れていない、という世間に対する憎しみ。

学校と勉強を破壊しようとする連中の妄言に振り回されても、ろくなことにならない。だ が、公的な学校教育がどう変ろうと、結局、子供に力を与えるのは、親の責任、家庭の義務。連中は、いずれかならず駆逐される。自分の子供をあえて堕落さ せ、学校の先生にでもしようと思うのでなければ、知識の詰め込みは、むしろ、どんどんやった方がいい。どうせ子供は、そんなもの、大量に詰め込まれたっ て、上の空で、ムダな妄想や連想、さらには内職に明け暮れる。だが、それこそが、本当の勉強だ。その中で、研究でも、芸術でも、一般企業でも、その他の仕 事でも、自分で考え、自分で生きられる子が育つ。


by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka 純丘曜彰教授博士

(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。)

カネこそすべて

/江戸時代、商人、武士、寺社、「河原乞食」は、それぞれカネ、権力、尊敬、人気を分け合っており、どれを登っても、絶対的な勝ち組などにはなれない制度設計になっていた。現代は、身分制を廃した結果、カネに社会価値が一元化して、絶対的な勝ち組の世襲が実現。しかし、貧富格差は、疫病を引き起こし、疫病にはカネは無力だ。/

貧富格差の拡大が各国で問題になっている。かつては発展途上国と先進国の間の南北格差だったのが、国際化で、各国の中での貧富格差になってきた。経 済学的には、両極が国際的に平準化するところまで、格差は拡大する。つまり、金持は、どこの国でもアラブの大富豪のようになり、貧乏人は世界各地でゴミの 山をあさるところまで落ちる。

なんとかしなければ、なんて言ってみたって、勝ち組がわざわざ自分たちを負けの危険にさらすような制 度改革なんかする動機がない。選挙をやってみたって、選挙に出てくる政治家は、与党も、野党も、なんらかの意味での勝ち組ばかりなんだから、結局、同じ。 金持を豊かにすれば、貧乏人までおこぼれがまわる、なんていう濁流トリクル(あふれだし)政策のウソは、この百年来、発展途上国支援で、むしろ完全失敗が 実証済み。結局、あちこちに面倒な軍事独裁政権を生み出しただけ。日本はサラリーマン社会で、職を失う懸念がモラルの歯止めになってきたが、非正規ばかり になれば、暴れても失うモノはなくなり、安い外国人労働力も流入して、急激に治安が悪化するんじゃないだろうか。そして、かつてのローマ帝国のように、勝 ち組だけがまるまる別のところに移住してしまうんじゃないだろうか。

考えてみれば、江戸時代の身分制はよくできていた。どんな金 持も、武士にかなわない。大阪淀屋なんか、贅沢が過ぎるとか言いがかりを付けられ、貸付を踏み倒され、全財産没収。その武士も、寺社には頭が上がらない。 寺社も「河原乞食」の世話にならなければ、葬礼祭事を執り行うことができない。「河原乞食」は、どんなに人気があっても、投げ銭を拾う身の上。つまり、あ の身分制において、カネ、権力、尊敬、人気の4つが、トランプのように絡まり合っていて、どれかに勝っても、どれかに負ける、循環的な制度設計になってい た。どれをどんなに登っても、絶対的な勝ち組など存在しなかった。

一方、現代。人権、人権、と言って、人間の平等と引き替えに、 社会の価値をカネに一元化してしまった。権力も、尊敬も、人気も、カネを持っているかどうかで決まる。商売でも、芸能でも、一発当てれば、金持ちセレブの 仲間入り。カネがあればなんでも買えて、カネで選挙でも裁判でも有利にねじ曲げ、カネでいいところに住み、いい生活をして、健康や治療も手に入れる。そし て、そのカネの力で、商売でも、芸能でも、世襲をゴリ押し。一族の繁栄はとどまるところがない。まさに勝ち組。

IT関連など、商 売で当ててセレブに割り込むやつがいないではないが、古顔たちの中では、ずっと居心地が悪そう。となると、どこの国でも、若いやつが、アイドルだの、タレ ントだの、スポーツ選手だの、一発人気勝負を狙うのは当然。まことに合理的な人生設計だ。まるで生死を賭けて戦ったローマの剣闘士のよう。みんなのおも ちゃ。そんなのが、セレブになって、また息子や娘を業界や政界に押し込んで、出来試合。そりゃ、テレビや政治がおもしろくもなくなるのも、これまた当然。 ついこの前までは、学歴だけは、カネではどうにもならないものだった。のだが、AO入試とか言って、とうとう大学の方がバックドアを開いてしまった。もは や金持に怖いモノなし。いよいよ、まさに勝ち組。

だが、歴史を見ると、疫病は、絶対的にカネよりも強い。必勝のジョーカーだ。貧 富格差が開くと、疫病がはやる。発展途上国が発展途上国から脱出できなかったのも、貧富格差で疫病を根絶できなかったから。疫病を前にして、貧乏人はもち ろん、金持も、みんな平等に死ぬ。コレラ、ペスト、天然痘。エイズ、エボラ、溶連菌。どんなに逃げても、どこへ移住してもムリ。カネで買える特効薬なん か、ありゃしない。社会の健全性を守ることが、文明として生き残る道であることを自覚し、金持が自主的に貧富格差問題の解決に取り組まないと、結局、金持 を含め、人類は疫病で全滅してしまうよ。


by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka 純丘曜彰教授博士

(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。)

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