純丘曜彰教授博士: ニュースの蜂

『朝まで生テレビ!』の元ブレインが、硬派ジャーナリズムの精神に基づき、
浮き世の暇つぶし、憂ばらし、肝だめしに、大手の新聞やテレビがひよって
伝えないネタを、勝手取材、執着調査、偏屈考察で突き刺しまくります。 

2015年05月

欧米人はイルカに黒人奴隷の亡霊を見る

/追い込み漁で売られ、ショーでこき使われるイルカは、欧米人に、かつての黒人奴隷誘拐とミンストレルショーの悪行愚行の罪を思い出させる。一方、現地漁民も、自己中の被害者面に甘んじて、国際社会に食材として理解を得る努力を怠ってきた。歴史の常識は変わる。いずれにせよ、もはや潮時だ。/

 大航海時代以来、欧米の連中は、新大陸の労働力を調達すべく、アフリカでずっと奴隷狩りをやってきた。1962年、リンカーン大統領の奴隷解放宣 言で「奴隷」ではなくなったことにはなっているが、その後も百年以上に渡って差別問題が続いた。建前だけは自由ということにされた黒人たちは、その後、ミ ンストレルからマイケル・ジャクソン、エディ・マーフィーまで、御主人様たちに愛想を振りまくように仕込まれて、歌やダンスのショーで曲芸をやらされ、さ もなければ、ボクシングだの、バスケットボールだの、体を張った見世物「スポーツ」の世界で生きることを強いられた。


 日本人にとっては、イルカ漁も、その曲芸も、ただの「魚」の話だが、欧米人からすれば、それらは自分たちが隠蔽忘却してきた過去の恥ずべき暗黒史を見せ つけられるようで、いたたまれないのだろう。その罪の重さに耐えきれず、イルカについては、あたかも自分たちがその救済者であるかように振る舞って、過去 の罪を償わずにはいられないのだろう。ようするに、イルカ問題は、欧米人の根深い歴史的トラウマこそが元凶。


 そんなの、日本人としては知ったこっちゃない。いい迷惑。とはいえ、だからと言って、どこが悪い、と開き直ってみたところで、それで連中が納得するわけ がない。かえって、その開き直りに自分たちの過去の悪辣な姿が垣間見え、ますます日本に対する「正義」の鉄槌を高く振り上げ、イルカたちを力尽くでも解放 しようとするだけ。


 とはいえ、イルカの話で、日本人は、と言われても、それはそれでまた迷惑。生まれてこのかた半世紀以上にもなるが、イルカなんか喰ったことがない。北方 領土だの沖縄だのなら、もしくは、日本の基幹産業の米作だの自動車だのなら、同じ日本人としてなんとかせねば、とも思うが、辺境の異端漁民の奇妙な異食趣 味のために、日本の外交から学術まですべてをリスクに晒すなどというのは、あまりにバカバカしい。費用対効果としてまったく割が合わない。国家を挙げて日 本人としての民族的なプライドを賭けるほどの重要性があるとは、とうてい思えないし、まったくシンパシーも感じない。


 漏れ聞くに、野良イルカを取ってくるだけで、ずっとずいぶん悪どくボロ儲けをしてきたそうじゃないか。これまでにその利益の半分でも宣伝普及費に注ぎ込 み、日本人にも、欧米人にも、フカヒレやツバメの巣のような高級希少食材としてイルカを認知してもらう努力をきちんとやってきていたならば、こんな事態に はならなかった。自分たちの強欲と怠慢のツケが回ったんだよ。この場に及んで、自分たちの「利権商売」のために、日本が手間をかけるなどというのは、外部 不経済もいいところ。つまり、日本人一般からコストを搾取して、連中が自分たちのポッケに入れているだけ。


 たしかに、かつてイルカだの、クジラだののおかげで、日本は苦難の時代を乗り切ってきた。だが、それは、黒人奴隷同様、もはや歴史の話。現代の日本が国 際社会の中で生き残っていくための国家戦略としては、むしろいま一部の連中がかってにやっているだけのイルカ漁の方を「補助金」の小銭ですっぱり止めさ せ、いまだにイヌだの、サルだの喰っているような、小うるさい異食の連中に、欧米と一緒になって圧力をかけていく側に回った方が得策じゃないのか。


 かつては当然だった黒人奴隷と同様、歴史の常識は変わる。抗ってもムリ。これまで何度も機会はあったのに、自己中の被害者面で当たり散らし、国際理解を 得る努力を怠ってきたツケだ。もはや勝敗は決してしまっている。イルカより、あんたたちの方が完全に湾内に追い込まれてしまったんだよ。もう潮時だ。これ 以上、ムダにじたばたやっていると、村ごと、世界から経済的文化的に「野蛮人」として「撲殺」されるぞ。


(大阪芸術 大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メ ディア文化論。著書に『悪魔は涙を流さない:カトリックマフィアvsフリーメイソン 洗礼者聖ヨハネの知恵とナポレオンの財宝を組み込んだパーマネントトラヴェラーファンド「英雄」運用報告書』などがある。)

マスコミが報じない都構想投票のカネ

/十分な議論が尽くされないまま住民投票が強行された背景には、新聞やテレビ、ネットに対する推進派の広告出稿による圧力があったのではないか。そのケタはずれの資金力は想像を絶していた。いったい誰が出したやら、民主主義は辞めれば済むが「借金」はそうはいかない。/

 専門家ならみんなわかっているくせに新聞やテレビ、ネットで報じないのが、今回の都構想住民投票にまつわるカネの出どころの問題。


 本来であれば、政権側の第一次提案に対し、マスコミが批判的に検討を加えることで、問題の洗い出しが行われ、その修正によって深みを増し、おのずから有 権者の過半が賛同できる程度の穏健妥当な政策へと磨かれるはずだった。ところが、今回、第一次提案のまま、相互の理解も検討もなにもない、ムリとムダの住 民投票が強行されてしまった。それは、マスコミがまともに機能しなかったからだ。


 政権側が、第一次提案に対するいっさいの批判を「偏向」として圧力をかけた。しかし、もちろん新聞やテレビも、ジャーナリズムである以上、通常、政治的 圧力に屈しない反骨精神はある。ところが、今回の圧力は、政治的なものではなく、経済的なものだったのではないか。反対派がこぞって驚いたのが、今回の政 権側推進派の圧倒的な資金力だ。その法外莫大なカネの力で、彼らはケタ違いの一大広告スポンサーとなり、新聞やテレビ、ネットを実質的に「買収」してし まった。


 タダ見のドブ客より広告の御大尽客。いくら報道局と言えども、営業局には逆らえない、スポンサー様にケチはつけられない、というのが民間私企業であるマ スコミの限界。タバコだろうと、原子力だろうと、目をつぶる。都構想もまたしかり。完全に反骨の骨抜き。それどころか、スポンサー様の推進派が喜びそうな ゲストまで招いて茶番報道まで。たとえば、長谷川豊のように年初より都構想支持を公言している者を「キャスター」に据え、投票前日に特別「報道」番組を組 む(5月16日、テレビ大阪)などという暴挙は、どう見ても公共の電波を使うテレビ局として著しく公正を欠いていたと言わざるをえない。


 さて、で、カネの出どころだ。2012年においても維新の会は金欠で、候補者集めかたがた政治塾を開き、二千人以上から年12万円を掻き集めるなどとい うことをやっていた。今回も千円のTシャツ、三百円のエコバッグ、二百円の缶バッチを売った、ということだが、そんなものの収益で、今回の住民投票に費や した推進派の、ケタ違いのマスコミ広告費を賄えるわけがない。そもそも、相当の金額を広告代理店に積まなければ、あれだけ大量の広告枠そのものを、他社か らムリヤリ融通し捻出してくることができるわけがない。


 となると、誰があれほどのケタ違いのカネを出したのか。既得権益をぜんぶ壊す、というのが推進側のウリだったが、それは同時に、既得権益を引っぱがして 流動化させ、別のやつに新規権益として与えてやる、ということでもあった。また、制度移行に行政だけで600億はかかると言われたが、民間の住所変更に伴 う看板や印刷物、ネットの作り直しは、さらにその数百倍の経済波及効果があり、この関連の建設企業や事務企業も、都構想は十分、先行投資に値しただろう。 くわえて、多種多様な公務員も大半を派遣に置き換えると、その派遣会社は、給与のピンハネで、かなりのいい商売になるはずだった。まして、衰退ぎみのパチ ンコに代えて国際カジノを開くとなれば、その実績やノウハウのある国外の会社が都構想にも協力しないでもあるまい。さらに、憲法改正とのバーターがあった りしたら、その筋でも国防系大企業もイッチョカミしておいた方がいい、という経営判断を下すだろう。いずれも憶測の域を出ないが、推進派の意向などおかま いなしに、屠った後の大阪市の屍肉を狙って、背後で有象無象がうごめいていたことは想像に難くない。

 そもそもこの手法は、ハゲタカファン ドが弱体企業を襲撃する際の「LBO(レバレッジド・バイアウト)」と呼ばれるもの。まだ得てもいない相手先企業の資産をかってに先に担保にしてしまって 買収資金を調達し、買収完了後、自分のものとなった弱体企業をバラバラに解体売却して返済する。しかし、このきわどい手法は、買収に失敗したとき、ファン ド本体の返済能力をはるかに超える損失と負債を抱え、ただでは済まないことになる。


 もはやすべてワヤ。たしかに民主主義は、投票に敗れても、辞めれば済む。どのみち、党庫が空っぽでは、年末の選挙など、どうやっても出ようがあるまい。ただ、辞めても「借 金」は消えない。借りたつもりでなくても、出した連中は、騙された、と思っている。本人はおめでたく、一人、テレビタレントに転向するつもりらしいが、は たしてそれで許してもらえるのだろうか。これまでにも政治家で「自死」だの「病死」だの、カネ絡みの妙なウワサは何度も聞いている。人を煽ったツケ、とく に欲得まみれの連中に出してもらってしまったカネのツケは恐ろしい。


 マスコミとしては、彼がどうなれ、もういただくものをいただいた以上、その大本のカネの出どころの問題については、もう終わった話として、いっさい触れ たくもあるまい。ただ、すぐに辞めずにいましばらく続けるとかで、その間に府や市の公財が奇異な処分をされないかどうかは、マスコミの本来の仕事として、 しっかり見張っておいた方がいいかもしれない。


(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門 は哲学、メディア文化論。著書に『夢見る幽霊:オバカオバケたちのドタバタ本格密室ミステリ』などがある。)

都構想投票は丸ごと中止に

/このままじゃあかんって、あんたもたいがい。チンピラを追い出すのにヨタモンを呼び入れるアホはおらん。白黒つけて、遺恨を残せば、なんもまとまらん。こんなアホくさいムダな投票なんて、いまからでも丸ごと中止にでけんのやろか?/

 都にならんと大阪はワヤやぞ、嫌ならとっととワレを応援せんかい、このドアホっ! なんて、まさに、世界が滅ぶ!教祖を信じよ!てな、けったいな新興しゅーきょーのオドシとおんなじで、まるきし大阪っぽくないわなぁ。こないしょーも無い 話で街を白黒二分しよってからに、まったく、あないややこしい野暮天、どっから来よったんかいな?


 四天王寺の五重塔に登り、テッペンで派手にやらかすサギ取りのおっさんは、そりゃ、おもろいわ。毎度、泣き落としで、負けじゃ、しまいじゃ、言うて、飛 び降りちゃ、引っ張り布団でテッペンまで飛んで戻りよる。ほんま、みごとなニワカ狂言や。そやかて、あの木登りエテコ、ほんまはよう好かんねん。オほカタ とか、ノのムラとかの同類やろ。『白い巨塔』の財前ごろちゃんみたいに野心丸出しで、東京くんだりまで出かけて、あっちゃこっちゃで怪しげなバーターまと め、目盛りごまかしたインチキ業績グラフの前で演説ぶっこけるなんぞ、ほんま、ようプラプラ動く屋根屋のフンドシやわ。


 このままじゃあかん、って、そりゃそうやろけど、だからちゅうても、あんたもたいがいやろ。チンピラ追い出すんにヨタモン呼び入れるアホがどこにおます かいな。この数年、三下たちの所行見てたら、こりゃ、こないな茶番ももう潮時やなぁ、と、だれでも思いますがな。サギ取りかて、あれ、オチは、すくうてや る言うてた布団持ちたちが、アホの重みでどたまぶつけて、目ン玉から火ぃ出し、町中が丸焼け、だっせ。


 前にちぃと大阪ん景気良うなったんは、東日本大震災と福島原発事故で逃げてきた会社があったからで、けど、そん人たちも、年来、しちゃかめっちゃかの大 阪に呆れ、もう逃げ出しよった。東京から会社だ、工場だ、また呼び込もう言うたって、なにが悲しゅうて、こない揉めごと続きの、落ち着かん大阪なんか来ま すかいな。


 そもそもなんで大阪がトップにならんとあきませんの? 大阪の知恵、言うたら、むしろトップにならんことだっせ。奈良や京都に都があったときも、東京に都が移ったときも、こりゃもうあかんわ、かんべんしてぇ や、言いながら、あんじょうあんばいよう、やりくりして、のらりくらりと今までぼちぼち。ちゃらんぽらんも、年季がちゃいまんねん。四天王寺なんか、千四 百年以上も前の聖徳太子の創建だっせ。なんべんも焼けたっちゅうに、そのたんび再建して、滅びもせんと、まだちゃんとありまんねん。大阪も同じや。奈良や 京都なんぞよりも、ずっとむかしっから、大阪は、この調子ですわ。ちゃらけて笑かし、泣いちゃあ頭ぁ下げ、なんだかんだでしぶとく生き残るんが浪速魂や ろ。


 だいいち大阪なんて、関西あっての大阪だっせ。ワテがトップや、なんて言うたら、京都の人たち、怒りまっせ。御所も無いくせに、アホちゃうか、言うて、 よけい侮られますがな。それより、京都の人たち、観光でぎょうさん稼いで、大阪に買いもん来てくれれば、ええんちゃう? 奈良で畑やって、大阪で部品作って、神戸で輸出して、みんな仲良う「関西州」だか「近畿州」だか言うて連携する、っちゅう、そないな話や無かったん? どこでどうして、こないちまい話になったん?


 ここまで、白や、黒や、ゆうたら、どっちが勝ったって、こりゃ、もうノーサイドん、ならんがな。結局、どっちも、もうまとまらんし、よけい、なんも前に 進まんくなってもうたがな。この後始末、いったい、どないすんねん? 源平やないが、負けた側、壇ノ浦に沈めたるか? これ、投票を丸ごと止める、たとえ投票やっても開票せずに止める手は無いんか? こない、だれが敵じゃ、味方じゃ、言うんは、ほんまもう大阪らしぅないわ。


(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。著書に『夢見る幽霊:オバカオバケたちのドタバタ本格密室ミステリ』などがある。)

風評被害だ!はオウンゴール

/風評は、一般のお客さまの不安という、根も葉もある厳然たる事実。これを罵倒非難しても、一般のお客さまを激減させるだけ。お客第一、お詫びと感謝を忘れれば、大きな試練が与えられる。/

 箱根町長の第一声が「風評被害」で驚いた。風評だ、根も葉も無い噂だ、という方が、大衆を口先だけで騙そうとする「デマ」じゃないのか。そもそ も、風評被害だ、と当たり散らすことで、いったい誰を攻撃してしまっているのか理解しているのか。危ないんじゃないか、と言っているのは、一般のお客さま だぞ。もちろん、一般のお客さまはべつに専門家でもないのだから、たしかにその話に根も葉も無いかもしれない。だが、不安な気持は、一般のお客さまたち の、根も葉もある厳然たる事実だ。その存在と広がりは、ウソでも、デマでもない。


 なのに、おまえら、ドシロウトだろ、バカなんじゃないの、なんにしても、オレたちの商売のジャマになるようなデマカセを言いふらすんじゃねぇよ、と罵倒 非難して、それで、ああ、私たちが間違っておりました、回心しますから、どうかお願いです、これまでどおり箱根に登らせててください、なんていう、卑屈な 客がいるものか。こんな言われようでは、ウワサをするのさえも止め、あいつら、関わると面倒くさい、ほっておこう、と、ひたすら無関心になるだけ。反感を 持つ敵を増やしてしまっただけ。


 そもそも、箱根の住民にしても、いったいどこまで火山の専門家なのか。いや、火山の専門家ですら、火山の今後のことなど、わかるものか。危険だ、という のが根も葉も無いのなら、同様に、安全だ、というのも根も葉もあるまい。根も葉もない安全を言いふらして、本当は危険かもしれないところに客を集めようと いう魂胆のどこが、おもてなし、か。むしろ、それは、オレサマ中心のカネ儲け第一主義。おもてなしの対極だ。


 もともと箱根なんて、自分たちで湯を沸かしているわけでもなし、天然の風光明媚な場所に店や旅館を構えただけで、江戸時代から数百年、その既得権と慢心 で、ほっておいても、客どもはカネを持って自分たちの所に来たがるもの、と、心底、勘違いしてしまったのだろう。これまでにしたって、火山そのものは、以 前からこんなもの。都合の良い方の「風評」のおかげで喰ってこれただけ。しかし、昨年の御嶽山の事件もあり、今回、連休にぶつかり、初めてマスコミ取材の 荒波に晒され、初動対応を過った。つまり、火山のせいではなく、自分たちの不首尾こそがお客さまを激減させてしまったのだ。


 実際、もっと不安定な火山を抱えながら、その観光地として、多くの人々の信頼と愛顧を得て、長年、うまくやっているところは他にいくらでもある。今般、 世間をお騒がせして申しわけごさいません、大勢の皆様に御心配をいただき本当にありがたく思っております。私どもにもわからないことばかりですが、関連の 諸官庁および専門の諸先生の御指導を仰ぎながら、お客様の安全こそを最優先に、これまで以上に、できるかぎりのおもてなしをさせていただきたいと心より 願っておりますので、どうか御安心してお出ましください、とでも言っておく如才のなさはないものか。


 いや、いくら口先の体裁ばかりを取り繕っても、ムリ。人間は、いざというときに、本心が露呈してしまう。おもてなしの基本は、なにがあっても、お客第 一。そして、なにかあれば、すぐに、お詫び、そして、感謝。身を捨て、心底からサービスに徹するなら、客の方がほってはおかない。より多くのお客さまたち を味方に付けてこその接客業。その基本を忘れれば、こうして神さまが試練を与える。


(それにしても、一般向けの ニュースで専門的な「噴火」という言い方は止めないか。「火山地下水噴気」「マグマ性水蒸気爆発」と狭義の「噴火」(火山弾や溶岩を伴う爆発)を分けない と、一般の人々には、状況を適格に理解できまい。その一方、「噴火」が立入禁止区域の中心、例の人工の井戸から吹き出すから、それ以外の99.7%は「安 全」である、などという報道の仕方、規制のかけ方も大いに問題がある。同じ火山系の富士山の宝永火口を見てみろ。あれなんか、完全に山体の横っ腹から大噴 火だぞ。箱根の場合、マグマが地下5キロなんだから、そこから最大45度の斜度でマグマなり亀裂なりが上昇した場合、箱根の中心である神山から半径5キロ のどこに新たに「噴火口」(噴煙口)ができても不思議ではあるまい。そして、そこが御嶽山規模の水蒸気爆発をしただけでも、そこからさらに2キロは噴石が 飛んでくる。つまり、神山から半径7キロは、なにがあっても不思議ではなかろう。つまり箱根町はおろか、その外輪山の外側まで、非常時の備えが必要だとい うことだ。ただし、それは箱根が火山である以上、いまに限った話ではなく、そういう非常時がいつあってもおかしくないことを想定しつつ、その自然の怖ろし さを含めて広く観光していただく体制を整えていってこそ、一般のお客さまの信頼と愛顧も得られるのではないのか。「風評被害だ!」と当たり散らしているだ けでは、なにも始まらない。)


(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。著書に『夢見る幽霊:オバカオバケたちのドタバタ本格密室ミステリ』などがある。)

大阪をサルどもから守ろう

/東京のサルマネをしたって、永遠に東京の後塵を喫するだけ。限界の東京なんかとは似ても似つかない、まったく新しい日本の首都のあり方を提案する高邁な理想、広大な気概は、大阪人には無いのかね?/

いまさら東京のサルマネなんかしたがるやつの気がしれない。たしかに東京は、いろいろな意味でもう限界だ。非常時のことを考えれば、そのバックアッ プも必要だろう。しかし、だからと言って、なにも大阪が、東京の劣化コピーになって、わざわざ東京を支えてやる義理もあるまい。そもそも大阪をいまさら、 あんな風に完全に行き詰まってしまっている東京のマガイモノにしようなどというのは、政治的な見識と展望に欠ける。


 もちろん大阪だって、良い状況じゃあるまい。だが、東京のサルマネをしたって、永遠に東京の後塵を喫するだけ。大阪は大阪、関西は関西という郷土愛、地 元としてのプライドは無いのかね? 大阪を変えると言うなら、将来、東京に取って代わるような、東京なんかとは似ても似つかない、まったく新しい日本の首都のあり方、大都市の形態を世界に提 案していくくらいの高邁な理想と広大な気概は無いのかね?


 東京では、箱根より西、東照宮より北は、ニュースもならない。東京人(故郷を捨てて上京してきた田舎者たち)からすれば、関東以外は、カネと労働力を吸 い上げるためだけの劣等国民どもの植民地にすぎないから。なかでも関西は、東京では、ここにも書けないほど散々な言われよう。関西に行く、と言っただけ で、連中は、早く東京に戻れるといいね、だからね。


 だから、実際に来てみるまで、関西なんて、まったく期待していなかった。ところが、こうして住んでみると、意外に居心地がいい。第一に気候が穏やかで、 災害も少ない。さすが、日本列島のどこでも選べる時代に、最初に多くの都が作られただけのことはある。第二に、極度一極集中の東京のように、すべての交通 が都心に向かっていて渋滞も混雑も慢性便秘状態なのにどうしてもそこまで毎日出て行かないと仕事も娯楽も無い、というわけでもなく、関西は、ヨーロッパな どと似て、いくつもの中堅都市が緩やかに編み目状に繋がっており、どこへ行くにも屁のようなもの。


 第三に、どこでも同じ大手チェーンと巨大マンションと安物新興住宅地だらけの関東と違って、大阪は大阪、京都は京都、神戸は神戸、奈良は奈良、と、都市 や気風に多様性がある。滋賀や和歌山、香川まで入れれば、日本海から瀬戸内海、太平洋まで、さらにいろとりどり。文化も観光地も世界遺産級のすごいものが 揃っている。マスコミが無理やりはやらそうとしているだけの流行を強迫観念のように追い求め続ける巨大都市東京を横目に、関西はそれぞれの地域の歴史と伝 統を守りつつ、個々が目利きでいろいろ掘り出し、こっそりと新しいもの好きだったりする。


 ひとことで言うなら、関西はフトコロが深い。見栄っ張りの東京人のように、いろいろわざわざ自慢したりしないが、それは、どないでっか? に、ぼちぼちでんなぁ、としか答えず、世間の嫉妬をムダに買わない生活の知恵。いつも、もうあきまヘんわぁ、などと言いながら、かれこれ千五百年、それで なんとなくやってきているのが、関西のすごいところ。


 東京なら、もう東京にあるんだから、それでええやん。そんなに東京が良けりゃ、われだけかってに東京に行きさらせ。べつにだれも止めへんで。大阪には大 阪の良さがあるやろ。関西には関西のすばらしさがあるやろ。なのに、東京が、東京が、大阪も東京のような世界のメトロポリスに、って、それ、日本の下町暮 らしのくせに、変なスーツを着て、ミーがチミたちの貧乏くさい町内を、おフランスみたいに素敵にしてあげるザンスっ! って言ってたイヤミのよう。まあ、そういう劣等感の塊みたいな人がいて、それにかんたんに騙されてこき使われるチビタみたいな人がいて、それらをみんなが 呆れながら許容しているのもまた大阪らしいっちゃ大阪らしい良いところなんだが。


(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。著書に『夢見る幽霊:オバカオバケたちのドタバタ本格密室ミステリ』などがある。)

ギャラリー